私のおすすめの吟行地

神野紗希

神野紗希こうの さき

「スピカ」発行人

【保内町の赤レンガ小路(八幡浜市)-ほないちょうあかれんがこうじ(やわたはまし)-】

【保内町の赤レンガ小路(八幡浜市)-ほないちょうあかれんがこうじ(やわたはまし)-】
参考

俳人富澤赤黄男(とみざわかきお)の産土・保内町川之石には、養蚕で栄えた昔の町並みが残っています。赤レンガの小路を歩いていると、百年前にタイムスリップしたような気分です。明治時代に建てられた洋館はモダンレトロな味わいで、木造なのに西洋風の造りに工夫されているのが楽しい。また、地元でとれる良質な青石をふんだんに使って、町のあちこちに石段や護岸が組まれています。中でも川沿いの護岸は矢羽根積みが美しいのでお勧め。歩けばすぐ海、かもめたちが迎えてくれるのも嬉しいですね。海抜1mというのに護岸のすぐ上に民家が建ち並ぶ光景には、自然と共に暮らしてきた人々の歴史を感じます。知らない町なのにどこか懐かしい、そんな町です。

【岩城島の三千本桜(しまなみ海道)-いわぎじまのさんぜんぼんざくら(しまなみかいどう)-】

【岩城島の三千本桜(しまなみ海道)-いわぎじまのさんぜんぼんざくら(しまなみかいどう)-】
参考

瀬戸内海の岩城島はレモンの産地として有名ですが、数年前の春に訪れた桜の景色が忘れられません。島のまん中の積善山(せきぜんざん)には三千本の桜が植えられ、春になると島全体が桜色に染められます。空のブルー、海のエメラルドグリーン、桜のピンクと、それはそれは美しいのです。また、しまなみ海道の中心に位置しているので、頂上の展望台からは瀬戸内海の島々が360度見渡せます。山頂までは歩いて二時間ほどですが、桜のアーチの下を登っていく時間は本当に夢のよう。他の季節も、レモン狩りや潮流体験、美味しい海の幸など、岩城ならではの楽しみがあります。島へのアクセスはフェリーだけですが、一時間弱の船旅もまたわくわくするもの。甲板で潮風を浴びて俳句を作る時間が私は好きです。

【東洋のマチュピチュ・別子銅山-とうようのまちゅぴちゅ・べっしどうざん-】

【東洋のマチュピチュ・別子銅山-とうようのまちゅぴちゅ・べっしどうざん-】
参考

かつて別子銅山の採鉱本部があった東平(とうなる)地区は、標高750mの山中にあります。カーブの続く山道を抜けると、目の前に開ける遺構の光景。まるで千年前の遺跡のようで、数十年前まで人が住んでいたとはとても信じられません。宮崎駿のアニメーション映画『天空の城ラピュタ』に出てくる空中要塞ラピュタのように、春の可憐な草花が煉瓦の建造物を覆うように広がっていました。かつての町は植林によってすっかり森に返されていて、小学校や劇場の跡も、山深く分け入ったところにぽつんと残っています。観光用に整備されていない当時のままの遺構は、詩心を存分にくすぐってくれます。車があれば、別子から翠波(すいは)高原へと続く ドライブライン、はな街道もおすすめ。ことに翠波高原は、母の実家の近くだったので、幼いころから何度も訪れている思い出の場所です。丘に一面に広がる春の菜の花、秋のコスモスは本当に素晴らしく、初めて訪れた人にも深い郷愁を感じさせてくれる場所です。

▲ このページの先頭へ戻る