登山の魅力がぎゅっと詰まった憧れの名峰・石鎚山に挑戦

西日本最高峰であり百名山のひとつでもある、全国的にその名も高き「石鎚山」。
標高1,982mのこの山は、春夏秋冬の素晴らしい景色はもちろん、緑深いブナの森や、輝く一面の笹原、垂直の岩場を登る鎖場など、トレイルのバリエーションも豊富。
見える全ての山を眼下に従えた山頂からの眺めは絶景で、山登りの醍醐味をたっぷり味わうことのできる名山です。
なかなかハードルが高く感じられる石鎚山ですが、今回は比較的登りやすい土小屋ルートをご紹介します。
石鎚山はひとつの頂上を持った山ではなく、実は弥山(1,974m)、天狗岳(1,982m)、南尖峰(1,982m)という3つの山を総称した総体山です。
石鎚神社の頂上社があるピークが弥山、石鎚山のイメージとしてよく使われる尖ったピークが天狗岳、そのさらに奥に南尖峰があります。
天狗岳と南尖峰は左右が切り落ちた岩尾根を歩いていかなければいけないので、安易に行くことはできません。技術と経験を積んでから挑戦しましょう。
昔から信仰の対象とされてきた石鎚山には、古道を含めてさまざまな方向から登ることができますが、初心者にも登りやすいのは石鎚スカイラインの土小屋から登るルートです。
しかし「登りやすいから」といって軽装で登るのはNG。
土小屋から山頂までの標高差は600m近くあり、気温が5℃程度違うこともあるし、途中で急な雨にあったり、思わぬアクシデントに遭遇することもあります。
しっかり準備を整えてから山に入るのは登山のマナーであり、自分の身を守る重要なこと。 最初から本格的な登山用品を用意するのは難しいでしょうから、普段使っているものをうまく活用しながらしっかりと準備しましょう。

【服装】
速乾性と運動性にすぐれた重ね着できる服、登山用タイツやパンツ、靴底のしっかりしたトレッキングシューズ、厚手のソックスなど

【持ち物】
地図および地図アプリ、レインウェア、飲料水、行動食・非常食、ファーストエイドキット、ヘッドランプ、グローブ、携帯トイレなど
さて、準備が整ったらいよいよ登山開始!
石鎚神社の頂上社がある弥山までは片道約4.5km。
土小屋登山口からベンチ1というポイントまでのトレイルは広葉樹の森を歩くコース。途中にお隣の瓶ヶ森がとても美しく見える場所がありました。
目の前には光を反射して輝く笹原が斜面となって流れ落ちるように広がり、ところどころに生えている濃い緑色をした針葉樹が印象的で、まるで絵画のような景色。笹原の向こうには石鎚スカイラインや高知県の山々までくっきり見えて眺望も抜群です。

ベンチ2からベンチ3の辺りまで来ると石鎚山の山頂がぐっと近くなって迫力が増してきます。さらに、ベンチ3から二の鎖元までは大きな岩がゴロゴロ転がっている場所や急傾斜の石段などもあって、「いよいよこれから頂上へ向かうんだ…!」と気持ちも引き締まってきます。
そして二の鎖から三の鎖という鎖場を経由して山頂へ、という流れです。
石鎚山の鎖場は日本屈指の険しい鎖場としても知られています。
石鎚山全体には試しの鎖(上り48m・下り19m)、一の鎖(33m)、二の鎖(65m)、三の鎖(68m)という4つの鎖場があり、土小屋ルートでは二の鎖、三の鎖を通ります。

大きな鳥居をくぐって二の鎖元に着くと、山頂方向にもうひとつ木々に隠れるように鳥居があり、その奥に二の鎖場があります。
下から見上げても上がよく見えずドキドキしますが、慎重に足場を確かめながらゆっくり登って行きましょう。

二の鎖を登り切ったらすぐに三の鎖場。

二の鎖よりも鎖が太く迫力があって、さらに鎖場全体の視界が開けているので視覚的にも三の鎖のほうが怖いかもしれません。
少し休憩して体力を回復し、心を落ち着けてから登っていきます。

※いずれの鎖場も、少しでも不安に感じたり、岩や鎖が濡れているときなどは無理せずに迂回路を通りましょう。ヘルメットなどの安全装具があればなお安心です。

途中で足をどこに置いたらいいか迷ったところもありましたが、なんとか無事にクリア。
目の前には頂上社!弥山に到着です!
弥山に立ってまず感動するのは、目の前にそびえる天狗岳の険しい美しさ!
天狗岳の向こうには高知県の山々がずっと続き、条件に恵まれれば太平洋まで見渡すことができるのです。
そして南西の方向にある愛媛県第2の高峰・ニノ森へと続く笹原の斜面と、面河へと続く谷の美しさ!

もう何枚写真を撮ったかわからないほど夢中になってシャッターを切っていました。
この場所に立てば、ここまで登り切った人にしか分からない感動を味わうことができます。
どんなにしんどくても「また登りたい」と自然に思えてしまう、魅力に溢れた山でした。