八幡浜の老舗染物店 地細工紺屋 若松


2024.03.29

はじめに

愛媛県八幡浜市は、宇和海に面しており、四国有数の漁港として知られています。ここでは豊富な魚が水揚げされ、海の幸が充実しています。また、山の斜面に連なる段々畑からは、高品質で美味しいみかんが収穫されます。このような自然豊かな場所に位置する八幡浜の中心部には、江戸時代から続く老舗染物店があります。

地細工紺屋 若松

江戸時代の文政5年(1822年)創業した藍染めの紺屋、「若松」は、現在では5代目若松智さんが約200年のわたる伝統の技術を受け継いでいます。江戸時代末期に建てられた工房では、地細工紺屋(じざいくこんや)として、旗・幕・織・五月織・印染などの手染めの仕事を続けています。作品は昔ながらの製法であり、機械を使用せず、手製の道具を用いて全てが職人の手作業で行われています。そのため、魅力あふれる世界にひとつだけの作品が生み出されています。

作業工程

作品ができるまでの主な作業工程は
 
  1. ①布を水につけ縮ませ乾燥させる
  2. ②下絵を描く→伸子張り
  3. ③下絵に糊を置く→米糠をかける→裏水引き→乾燥
  4. ④染色→乾燥
  5. ⑤糊伏せ→地色染め→乾燥
  6. ⑥色止め→水洗い→乾燥
  7. ⑦隈取り→縫製

の工程で仕上げられます。
 
今回は作業工程の「下絵を描く→絵に糊を置く→米糠をかける→裏水引き→染色」
​​​を見学させて頂きました。

下絵を描く

桐の木を燃やして「消し炭」を作ります。その炭を道具の先端に挟み布に下書きをしたあと、筆を使い本書きしていきます。

また年月を経ても変わらない神社の神紋や家紋などを作成する時は、何度も同じ物を作れるように和紙に穴を開けて型を作り、その上から細かい消し炭を包んだものを布に擦り写し下絵を作るそうです。なぜ桐の木が、染物の下書きに適しているかというと、桐の炭ははらえばすぐ落ちるので便利だからそうです。

糊を作る

作業に使う糊は、もち粉に様々な物を入れて作られた特製の糊です。そのまま使うと固すぎるので、作業前に水と混ぜペースト状態になるまでかき混ぜます。それを何重にも重ねた和紙に柿渋を塗って作られた特製の円錐型の筒に流し込みます。
 

下絵に糊を置く

指先を使い絶妙な力加減で、絞りだしながら下絵に沿ってずれることなく描いていきます。口金は大小様々な種類があり用途に使い分け太い線、細い線が表現されるそうです。

米糠をかける

糊が乾く前に浅い鉄鍋で米糠をよく炒って油抜きした糠を張り付かせ、余分な糠ははらい落とします。この作業を行うことにより染色をする時に他の部分に染料がはみ出さず、白地を残すことができます。

裏水引き

ふのりを溶いた水を布の裏から薄く塗っていくことで、表に塗ったのりを裏側まで浸透させます。

染色

乾燥したら染料を使って色をつけていきます。また色に深みを出すために裏からも色をつけることもあります。色の滲み具合を見計らって、何度も色を重ねることで濃淡を表現し、その陰影によって立体感が生まれていきます。また染料が乾くにつれて深みのある美しい色に変化していきました。
今回は取材ということで同時進行で見せていただきましたが、本来であれば1つの工程に丸1日かけるのが普通ということでした。今回拝見したタペストリーは、2024年の干支である辰をテーマとして製作されたもので、とあるお客さんからの要望で製作したところ、それを見た別のお客さんからもオーダーが入り製作を行なっているということでした。

PR動画を作成

現場でご夫婦から伺った作品に対する思いを動画にまとめてみました。
ぜひご覧ください!

道後温泉別館 飛鳥乃湯泉

若松さんの作品は、道後にある飛鳥乃湯の個室休憩室(玉之石の間)に飾られています。大国主命・少彦名命の「玉の石」伝説をテーマとした約10メートルほどの1枚の作品で、こちらの作品はデザインから考えられ製作には1年以上かかったそうです。
作品は伝説のお話通り少彦名命が道後の湯に入り癒された安らかな表情と喜びが美しい色合いで描かれています。また1枚の布で螺旋を描くときに見える裏地の模様は、裏地が斜めに描くことで螺旋を描いて展示された時に裏模様の違和感がなくなるように計算されて製作が行われています。

玉の石伝説

大国主命と少彦名命が伊予の国を訪れたとき少彦名命が病気に苦しみました。そこで大国主命が少彦名命を手のひらにのせて道後の湯に浸しました。すると少彦名命はたちまち元気を取り戻し喜び石の上で踊り出したといわれています。
 

まとめ

若松さんは、日々より良い作品を作りお客さんの笑顔のために2人3脚で製作されてきました。今は6代目の息子さんも加わった3人4脚でさらなるこだわりと新しい作風も増え、約200年受け継がれてなおさらなる高みを目指されるということです。「親から子への贈り物」「海外への贈り物」など気持ちを伝える1つの形として、その染物に対して江戸時代より変わらず真摯に向き合っている若松さんの想いの一端を知ることができました。人との繋がりを大切にし続ける、気さくなご夫婦のはからいにより作業工房の見学が実現しております。自分だけの作品が欲しいと思った方も、デザインから気軽に相談に乗って頂けます。皆様も八幡浜に訪れた際には伝統文化や伝統技法を感じに足を運んでみてはいかがでしょう。

地細工紺屋 若松

〒796ー0068
愛媛県八幡浜市浜之町182ー2
TEL0894ー24ー0691
営業時間 10:00〜18:00(不定休)

アクセス
車の場合
松山市内から約1時間25分
駐車場なし
市営中央有料駐車場あり 徒歩すぐ

電車の場合
八幡浜駅から徒歩約16分

自己紹介

自己紹介

はじめまして!ひめ旅部の夏井です。

数年前からカメラに興味を持ち、休日には愛媛県を中心に、四季折々の風景写真を撮影し始めました。四国の新しいフォトスポットも探求し活動しています。
lnstagram「@alchemist0709」で撮影した写真もアップしています。
愛媛県の魅力を伝えるために頑張りますのでよろしくお願いします。

地細工紺屋 若松