橋の向こうに待つ、懐かしい風景。大洲市河辺町「かわべ浪漫八橋」を訪ねて


2026.09.11
「この橋の向こうには、どんな景色が待っているんだろう」
そんなことを思いながら、橋を訪ねるのが好きです。
なかでも特に心惹かれるのが、大洲市河辺町の屋根付き橋。木造の橋に屋根が付いたどこか懐かしい姿が、山あいの景色によくなじんでいます。
市街地を離れて河辺町へ入ると、空気が少しひんやり。川のせせらぎを聞きながら緑の中を進む道は、それだけでも心をゆるめてくれます。
今回は、この「かわべ浪漫八橋(ろまんはちきょう)マップ」を手に、明治から平成にかけて造られた8つの屋根付き橋を訪ねました。
それぞれの橋に残る歴史や周囲の景色とともに、河辺町を巡る旅を一緒に楽しんでみませんか。

龍王橋

朝早く訪れた龍王橋。橋の上から川をのぞくと、朝日が水面にきらきらと反射し、静かな山あいをやさしく照らしていました。
長さ25.4mもある橋は、近くで見ると想像以上に立派。屋根の下を歩きながら木々と川を眺めていると、時間までゆっくり流れているように感じます。
龍王橋は、農業の神様として信仰される秋滝(あきたき)龍王神社へと続く道にあります。かつては地域の人々の休憩場所や、農作物の仮置き場などに使われていた屋根付き橋を、平成9年に復元したものだそうです。

秋滝橋

龍王橋の近くにある秋滝橋は、長さ4mほどの小ぢんまりとした橋です。
木々に囲まれた道の途中にちょこんと佇む姿が、なんともかわいらしく、苔に覆われた屋根は周囲の緑にすっかり溶け込んでいました。
こちらも秋滝龍王神社へと続く道にあり、龍王橋とともに平成9年に復元された屋根付き橋です。

ふれあい橋

「ゆうとぴあ河辺 ふるさとの宿」のすぐ隣にある、ふれあい橋。長さ25.8mの堂々とした屋根付き橋で、中にはベンチも置かれています。
橋の下へ続く階段を降りると、川のそばまで行くことができます。川の流れる音を間近に聞きながら見上げる橋は、上から眺めるのとはまた違う立派さがありました。
ふれあい橋は、河辺ふるさと公園のシンボルとして、平成2年度から3年度にかけて造られたそうです。車社会とともに昔ながらの屋根付き橋が少なくなるなか、その文化を後世に残したいという思いから架けられたのだそうです。

豊年(ほうねん)橋

道沿いから少し入り、民家のそばを歩いて進むと、木々の間に隠れるように豊年橋が現れます。
長さはわずか3.3m。観光地の橋というよりも、今も地域の暮らしの中にそっと残されているような、素朴で温かな雰囲気がありました。
もともとは河辺川に架かっていた屋根付き橋で、昭和26年に取り壊される際、住民の方がその材料を譲り受け、自宅近くの小川へ移したものだそうです。
 

三嶋橋

集落の風景に溶け込みながらも、横に長く伸びた屋根が目を引く三嶋橋。
橋へ向かう入口は道のすぐそばにあり、家と家の間を抜けて進みます。近づいて見ると屋根が大きく広がり、長さ14.8mの橋は、遠くから眺めたときよりも存在感がありました。
三嶋橋は大正12年に架けられたもので、この場所は三嶋神社の参道にあたるといわれています。神様への信仰心を表すために屋根が付けられ、地域の方々や関係者から寄せられた浄財によって架けられたそうです。
 

帯江橋(おびえばし)

長さ16.5mの帯江橋。屋根の下へ足を踏み入れると、川から吹き抜ける風がとても心地よく、思わず足を止めて涼みたくなりました。
近くに住む方にお話をうかがうと、今でもここで涼んだり、地域のみなさんで集まって話をしたりするのだそうです。
帯江橋は、昭和27年(1952年)に架けられたそうです。屋根は雨露による木材の腐敗を防ぐために付けられ、農作物や農機具の一時的な置き場所としても使われてきたのだそうです。
橋としてだけでなく、人々が集い、ひと休みできる場所として、地域の暮らしに寄り添ってきたことがうかがえました。
 

御幸の橋

浪漫八橋の中で、私が一番心惹かれたのが御幸の橋です。
木々に包まれた太鼓橋の奥には天神社があり、橋を渡りながら少しずつ神聖な場所へ近づいていくような、なんともいえない風情があります。杉皮葺き(すぎかわぶき)の屋根や、やわらかな曲線を描く橋の姿も美しく、いつまでも眺めていたくなりました。
御幸の橋は浪漫八橋の中で最も古い橋です。天神社が創設されたとされる安永2年(1773年)に最初の橋が架けられたといわれ、現在の橋は、明治19年(1886年)の大洪水で流失した後、氏子のみなさんによって再建されたものだそうです。
ケヤキ材を使い、釘を一本も使わずに造られた貴重な橋で、愛媛県の有形民俗文化財に指定されています。

番外編・飛石橋

三杯谷の滝にある龍神橋にも向かいましたが、2026年8月1日の訪問時は遊歩道が通行止めになっており、残念ながら橋まで行くことができませんでした。
そこで立ち寄ったのが、屋根付きではない飛石橋です。
川の中に並ぶ石の上を、一歩ずつ足元を確かめながら向こう岸へ。普通の橋とは違い、水の流れをすぐそばに感じながら渡るのが新鮮で、思った以上に楽しめました。
飛石橋は、昔から地域の人々が河辺川に石を並べ、農道として利用していたものを復元したそうです。屋根付き橋とはまた違った、昔の人の暮らしの知恵を感じられる橋でした。

ごあいさつ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
橋の向こうにあったのは、美しい景色だけでなく、河辺町に受け継がれてきた人々の暮らしと温かさでした。
まだまだ知らない愛媛がいっぱい。これからもカメラと一緒に、心惹かれる景色を探していきます。
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