急斜面に家々が重なる伊予市・「いりこの里」へ。手掘りトンネルと鰯供養塔が語る、時をかける旅。
2026.03.09
はじめに
愛媛県伊予市、国道378号「夕やけこやけライン」を走っていると、ふと目に飛び込んでくるノスタルジックな風景。そこが、今回ご紹介する「小網(こあみ)地区」です。
急峻な山が海へと迫り、そのわずかな斜面に家々が身を寄せ合うように建ち並ぶ姿は、まるで時間が止まったかのよう。今回は、この小さな集落に秘められた、胸を熱くする物語と絶景スポットをご紹介します!
急峻な山が海へと迫り、そのわずかな斜面に家々が身を寄せ合うように建ち並ぶ姿は、まるで時間が止まったかのよう。今回は、この小さな集落に秘められた、胸を熱くする物語と絶景スポットをご紹介します!
圧巻の「いりこの里」:急峻な斜面に息づく暮らしの知恵
愛媛県伊予市の「夕やけこやけライン」を走ると、突如として現れる不思議な景観。それが「いりこの里」として知られる小網地区です。ここは瀬戸内海では非常に珍しい、急峻な山肌に家々が密集する「傾斜地集落」の形態を残しています。慶長年間から漁業で栄えたこの地では、限られた土地を最大限に活用するため、海岸から山の上に向かって「家、県道、家、鉄道、家」が階段状に重なるという、まるで箱庭のような独特の構造が生まれました。
かつては、獲れたてのイワシを満載した籠を天秤棒で担ぎ、急な坂道を一気に駆け上がる活気あふれる光景が日常でした。男たちが海で戦い、女たちがその恵みを屋根や「ヒマヤ(干し場)」に広げて黄金色のいりこに仕上げる。そのダイナミックな風景は、かつて国鉄を利用する旅人たちの目を楽しませる名物でもありました。今も残る立派な石垣や細い路地を歩けば、厳しい自然と共生しながら海と共に生きてきた人々の力強い息遣いと、重厚な歴史の重みが肌に伝わってきます。
かつては、獲れたてのイワシを満載した籠を天秤棒で担ぎ、急な坂道を一気に駆け上がる活気あふれる光景が日常でした。男たちが海で戦い、女たちがその恵みを屋根や「ヒマヤ(干し場)」に広げて黄金色のいりこに仕上げる。そのダイナミックな風景は、かつて国鉄を利用する旅人たちの目を楽しませる名物でもありました。今も残る立派な石垣や細い路地を歩けば、厳しい自然と共生しながら海と共に生きてきた人々の力強い息遣いと、重厚な歴史の重みが肌に伝わってきます。
魂を揺さぶる「鰯供養塔」:命をいただく尊さを知る聖地
小網の集落を歩くと、他では滅多に見ることのできない「鰯(いわし)供養塔」に出会います。明治22年から昭和にかけて、折々に建立されたこれらの石碑には、この地で生きる人々の深い精神性が刻まれています。漁師たちは、自分たちの生計を立てるために日々大量の命を奪わざるを得ないという宿命を、誰よりも痛感していました。だからこそ、魚たちの霊を弔い、感謝を捧げることを決して忘れなかったのです。
供養塔の周りには、鰯だけでなく、鰆(さわら)や蛸(たこ)、さらには珍しい鯨の供養塔までもが並び、傍らには聖観音菩薩像が安置された祠が静かに佇んでいます。現代の私たちは、食卓に並ぶ魚がどこから来たのかを忘れがちですが、この場所は「命をいただくことで生かされている」という根源的な事実を、優しく、しかし力強く突きつけてくれます。海風に吹かれながら古い石碑と向き合う時間は、私たちの心にある「感謝の気持ち」をそっと呼び覚ましてくれる、特別なリトリート体験となるはずです。
供養塔の周りには、鰯だけでなく、鰆(さわら)や蛸(たこ)、さらには珍しい鯨の供養塔までもが並び、傍らには聖観音菩薩像が安置された祠が静かに佇んでいます。現代の私たちは、食卓に並ぶ魚がどこから来たのかを忘れがちですが、この場所は「命をいただくことで生かされている」という根源的な事実を、優しく、しかし力強く突きつけてくれます。海風に吹かれながら古い石碑と向き合う時間は、私たちの心にある「感謝の気持ち」をそっと呼び覚ましてくれる、特別なリトリート体験となるはずです。
レトロ好き必見!「小網トンネル」が語る不屈の開拓史
歴史ファンやレトロ建築好きを虜にして離さないのが、旧道に佇む「小網トンネル(小網隧道)」です。かつてこの場所は、険しい岩壁が海へと直接落ち込む交通の難所でした。満潮時や時化の日は通行すらままならなかったこの地に、明治初期、地元有志が立ち上がり、なんと「手掘り」で岩壁をくり抜いて約10メートルの「通り穴」を造り上げたのです。まさに、民間の力で道を切り拓いた不屈の精神の象徴といえます。
大正5年には郡道として整備され、現在の姿に近いレンガ造りの美しいトンネルとなりました。赤レンガと重厚な石組みが絶妙なコントラストを描くその姿は、一目見た瞬間に「これぞ近代化遺産!」と声を上げたくなるほどの情緒を放っています。トンネルの中に足を踏み入れると、手掘り時代のノミの跡もあり、ひんやりとした空気と共に、大正浪漫の香りが漂ってくるようです。国道から少し入った場所に隠れるように存在するこのトンネルは、まさに「歩いて観光するトンネル」の代表格。歴史の語り部として、今も静かに旅人を待っています。
大正5年には郡道として整備され、現在の姿に近いレンガ造りの美しいトンネルとなりました。赤レンガと重厚な石組みが絶妙なコントラストを描くその姿は、一目見た瞬間に「これぞ近代化遺産!」と声を上げたくなるほどの情緒を放っています。トンネルの中に足を踏み入れると、手掘り時代のノミの跡もあり、ひんやりとした空気と共に、大正浪漫の香りが漂ってくるようです。国道から少し入った場所に隠れるように存在するこのトンネルは、まさに「歩いて観光するトンネル」の代表格。歴史の語り部として、今も静かに旅人を待っています。
絶品「灘のいりこ」:五感で味わう海のダイヤモンド
小網を訪れたなら、その香りに誘われて出会うのが特産の「煮干いりこ」です。ここで作られる「灘のいりこ」は、関西方面のプロの料理人からも一目置かれる一級品。その秘密は、圧倒的な「鮮度」と伝統の製法にあります。カタクチイワシは傷みが早いため、水揚げから加工までのスピードが勝負。かつては各家庭で釜茹でし、天日干しにする光景が見られましたが、現在は最新の共同工場で、その伝統の技が引き継がれています。
特におすすめは、お盆過ぎから10月にかけて獲れる「秋イリコ」です。この時期のイワシは油分が程よく抜け、雑味のない透き通った最高級の出汁が取れると珍重されています。口に含めば、豊かな海の旨味が凝縮された深い味わいが広がり、まさに「海のダイヤモンド」と呼ぶにふさわしい逸品です。近年では健康食品としても注目され、おやつ感覚で食べられる「ちりめんじゃこ」も人気を博しています。小網の急斜面を吹き抜ける潮風と、降り注ぐ太陽が育んだ本物の味。その一粒一粒に込められた漁師たちの誇りを、ぜひ五感で堪能してください。
特におすすめは、お盆過ぎから10月にかけて獲れる「秋イリコ」です。この時期のイワシは油分が程よく抜け、雑味のない透き通った最高級の出汁が取れると珍重されています。口に含めば、豊かな海の旨味が凝縮された深い味わいが広がり、まさに「海のダイヤモンド」と呼ぶにふさわしい逸品です。近年では健康食品としても注目され、おやつ感覚で食べられる「ちりめんじゃこ」も人気を博しています。小網の急斜面を吹き抜ける潮風と、降り注ぐ太陽が育んだ本物の味。その一粒一粒に込められた漁師たちの誇りを、ぜひ五感で堪能してください。
おわりに
国道378号線をただ通り過ぎるだけでは決して気づくことのできない、豊かで深い物語が小網地区には息づいています。急峻な斜面に張り付くように建つ家々の力強さ、命の尊さを刻んだ石碑の静謐さ、そして大正時代の面影を今に伝えるレンガ造りのトンネル。ここには、効率やスピードが優先される現代社会がどこかに置き忘れてしまった、「生きていくことの原点」とも言える風景が、潮風とともに今も大切に守られています。
海と山がせめぎ合う厳しい自然環境の中で、知恵を絞り、互いに助け合い、海への感謝を捧げ続けてきた小網の人々。その精神性は、今も一粒の「いりこ」の中に黄金色の輝きとして凝縮されています。実際にこの地を歩き、その高低差を肌で感じ、トンネルの古い石肌に触れてみてください。そこには、写真や言葉だけでは伝えきれない、魂を揺さぶるような感動が待っています。伊予灘の美しい夕日に染まる集落を眺め、命の繋がりに思いを馳せる旅。心のリセットが必要なとき、あるいは本物の日本の原風景に触れたくなったとき、ぜひ、この小網地区を訪れてみてください。
海と山がせめぎ合う厳しい自然環境の中で、知恵を絞り、互いに助け合い、海への感謝を捧げ続けてきた小網の人々。その精神性は、今も一粒の「いりこ」の中に黄金色の輝きとして凝縮されています。実際にこの地を歩き、その高低差を肌で感じ、トンネルの古い石肌に触れてみてください。そこには、写真や言葉だけでは伝えきれない、魂を揺さぶるような感動が待っています。伊予灘の美しい夕日に染まる集落を眺め、命の繋がりに思いを馳せる旅。心のリセットが必要なとき、あるいは本物の日本の原風景に触れたくなったとき、ぜひ、この小網地区を訪れてみてください。
記事投稿者:かず
ひめ旅部のかずです。生まれも育ちも愛媛県は伊予市。「