伊予市・中山町の古刹「盛景寺」と樹齢700年の菩提樹を訪ねる癒やし旅


2026.09.07

はじめに

日々の忙しさに追われ、少しだけ立ち止まって深呼吸したいとき、私はふらりと一人旅に出たくなります。今回訪れたのは、愛媛県伊予市中山町。JR伊予中山駅から歩いて10分ほど、やわらかな山あいの風に包まれた場所です。小中学校の間へと続くのどかな坂道を登っていくと、街の喧騒を忘れさせてくれる静寂が待っていました。目指すのは、長い歴史を刻む古刹「盛景寺(じょうけいじ)」。木々のざわめきと澄んだ空気に導かれ、心がじんわりとほどけていくのを感じながら歩き始めました。

歴史の息吹を感じる楼門と見事な彫刻

坂を登りきると、目の前に堂々とした佇まいの楼門が現れました。室町時代の建築遺構と伝えられるこの門は、驚くことに釘を一切使わずに層を組み重ねて建てられているそうです。かつて長宗我部軍の戦火で焼失し、江戸時代の寛永3年に再建された歴史を持ち、砦のような重厚感を漂わせています。門をくぐり境内へ進むと、明治時代に長州大工の棟梁によって改築された美しい本堂が迎えてくれました。見上げれば、龍や鳳凰の見事な一刀彫が施されており、職人の息づかいが今にも伝わってくるかのようでした。

樹齢700年の大樹。聖なる菩提樹の木陰で

本堂の裏手に回ると、思わず息をのむほど圧倒的な存在感を放つ大木がそびえ立っていました。愛媛県の天然記念物にも指定されている、樹齢約700年の菩提樹(ぼだいじゅ)です。根回りは約3.5メートル、高さはおよそ30メートル。鎌倉時代に宋から持ち帰られ、手植えされたと伝わる巨木です。根元から4本に分かれた太い幹に触れてみると、ひんやりとした樹皮の感触の奥に、脈々と受け継がれてきた力強い生命力を感じます。木漏れ日を浴びながら見上げていると、胸の奥のモヤモヤがすっと消えていくようでした。

子どもたちの歌声と句碑が伝える町の温もり

盛景寺のすぐそばにある中山小学校の校庭前には、ひとつの句碑が静かに佇んでいます。「書きもかいて素麺すする青柚の香」。長年この地で教育に尽力した妻鳥暁太郎(めんどりきょうたろう)先生が詠んだ句です。先生が24歳の時に作詞作曲した「中山行進曲」は、運動会で子どもたちが日の丸の旗を手に「中山」の人文字を描いた名物行進曲でした。歌詞の8番には盛景寺の菩提樹も登場します。かつて校庭いっぱいに響き渡ったであろう元気な歌声や、地域の人々の温かい笑顔に思いを馳せると、胸がじんわりと温かくなりました。

おわりに

どこか懐かしい風景が広がる中山町。樹齢700年の菩提樹の静けさと、町を愛した人々の温もりに触れた一日の一人旅は、私の心に優しい余白を取り戻してくれました。心地よい風に吹かれながら古刹の石段を下りる頃には、日々の疲れもすっかり洗い流されていたように感じます。もしあなたが今、少しだけ心を休めたいと感じているなら、ぜひ愛媛の中山町を訪れてみてください。歴史を紡ぐ巨木と澄んだ空気が、いつでもあなたを優しく包み込んでくれるはずです。
記事投稿者:かず

記事投稿者:かず

ひめ旅部のかずです。生まれも育ちも愛媛県は伊予市。「伊予の本気」をお届けできるよう県内各地に出没中です。ひめ旅部の記事をきっかけに、カメラを持ってお出かけしていただけると嬉しいです!きっと、あなたの知らない愛媛が待っている?!