【愛媛県伊予市】夏目漱石や正岡子規も訪れた称名寺&鎌倉神社
2025.10.17
見事な枯山水が広がる境内は、まるで時が止まったかのような静謐世界
伊予市の静かな山あい、谷上山(たがみさん)のふもとに佇む称名寺(しょうみょうじ)は、平安時代の嘉祥3年(850年)、僧・宗貞によって開かれた歴史ある古刹です。真言宗智山派に属し、本尊・阿弥陀如来が穏やかに訪れる人々を迎えてくれます。源頼朝の弟・範頼の菩提のために再建され、かつては伊豫岡八幡神社の別当寺としても栄えた名刹。中世には伊予郡を代表する大寺院とされました。市指定文化財「称名寺文書」に残る守護の掟からも、当時の重みある役割がうかがえます。歴史と静寂に包まれたこの地で、悠久の時に触れてみませんか。
称名寺の境内には、静けさに包まれた枯山水の美しい庭が広がり、心落ち着くひとときを過ごせます。春になると、境内や駐車場を囲むソメイヨシノや八重桜が一斉に咲き誇り、まるで桃源郷のような風景に。桜越しに望む瀬戸内海の眺めは格別で、隠れた絶景お花見スポットとしても知られています。毎年5月3日には「花まつり」が行われ、咲き誇る花々とともに、優しく穏やかな仏の心にふれることができます。春の称名寺は、花と静寂が調和する特別な時間をもたらしてくれます。
聴いて楽しむ庭のアート“ 水琴窟”
称名寺の本堂右手には、ひっそりと佇む水琴窟(すいきんくつ)があります。これは、約200年前に造られた「伏瓶洞水門」を平成元年に再現したもので、埋蔵型のため音はとても繊細。竹筒にそっと耳を当てると、水滴が壺に落ちて響く、澄んだ琴のような音色が心に染み渡ります。住職はこの音を「心で聴き、心で応える幽玄の響き」と語り、訪れる人々にも自然の美しさと心の静けさにふれてほしいと願っています。風雅な庭の片隅で、目には見えない美しさに耳を澄ませてみませんか?心がすっと澄みわたる、特別な体験が待っています。
源範頼を偲んだ漱石の句
称名寺の静かな境内には、昭和3年ごろに建立された夏目漱石の句碑が佇んでいます。「蒲殿のいよいよ悲し枯れ尾花」「凩や冠者の墓所の落松葉」の2句が刻まれ、明治28年にこの地を訪れた漱石が、蒲冠者・源範頼の悲運に心を寄せて詠んだものです。哀愁ただよう句は、境内の落ち着いた雰囲気と見事に調和し、訪れる人の心に静かに響きます。同じ2句を刻んだ句碑が鎌倉神社にもあり、微妙な違いを読み比べてみるのも一興です。また、境内には正岡子規の句碑「夕栄の五色が濱をかすみけり」もあり、文学と歴史が重なる風雅な空間が広がっています。句に込められた想いにふれる、心静かなひとときを過ごしてみませんか。
◆ 称名寺 基本情報 ◆
住所:伊予市上吾川1418
電話番号:089-982-1710
参拝時間:参拝自由(いつでもお参りいただけます)
駐車場:無料駐車場あり(15台分)
公式サイト:https://www.syomyoji-iyo.net/
◆ 称名寺 基本情報 ◆
住所:伊予市上吾川1418
電話番号:089-982-1710
参拝時間:参拝自由(いつでもお参りいただけます)
駐車場:無料駐車場あり(15台分)
公式サイト:https://www.syomyoji-iyo.net/
蒲の冠者を祀る鎌倉神社
称名寺へと向かう途中、溜池を左に折れた先に、地元の人々から「鎌倉さん」と親しまれている小さな神社があります。ここは、源頼朝の異母弟・蒲冠者源範頼を祀る鎌倉神社。社殿の裏手には、「蒲冠者範頼公墓」と刻まれた棹石の墓が静かに佇み、その足元には範頼に仕えたとされる臣下たちの小さな五輪塔が十数基並んでいます。もとは称名寺が五輪塔を弔っていましたが、江戸時代に大洲藩主が墓石を建立し、正式に神社として祀られるようになりました。古くから戦いの神として信仰され、遠方から戦勝祈願に訪れる人もあったと伝えられています。歴史の影と静寂が調和するこの場所で、源範頼の物語にそっと耳を傾けてみませんか。
範頼の最期については定かではなく、伊豆で最期を迎えたとする説のほか、越前に落ち延びた、あるいは埼玉県の吉見観音に隠れ住んだなど、さまざまな伝承が残されています。そんな中、称名寺の境内で古木のエノキを伐採した際、中から範頼所持と伝わる一寸八分(約5.5cm)の金の毘沙門天が出土したと古記録に記されており、ここが本当の墓所なのではというロマンをかき立てます。
歴史の静かな余韻に包まれるこの場所で、波乱に満ちた源範頼の人生に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、ただの史跡巡りでは味わえない深い感動が、あなたを待っています。
歴史の静かな余韻に包まれるこの場所で、波乱に満ちた源範頼の人生に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、ただの史跡巡りでは味わえない深い感動が、あなたを待っています。
夏目漱石最古の句碑
社殿前には、夏目漱石の句碑が静かに佇んでいます。全国に点在する漱石の句碑の中でも最古のもので、しかも2句が1基に刻まれた非常に珍しい句碑です。
「蒲殿の いよいよ悲し かれ尾花」
「木枯らしや 冠者の墓撲つ 松落葉」
これらは、明治28年(1895年)、松山中学の英語教師だった漱石がこの地を訪れた際に詠んだもの。範頼の哀しい運命に心を寄せた句が、松山の俳人・村上霽月の筆で刻まれています。句碑裏面には、霽月の書と共に当時の由来も記されており、文学と歴史が響き合う趣深いスポットです。
◆ 鎌倉神社 基本情報 ◆
住所:伊予市上吾川1492
電話番号:089-982-1710(称名寺)
参拝時間:参拝自由(いつでもお参りいただけます)
駐車場:なし(称名寺の駐車場をご利用ください)
「蒲殿の いよいよ悲し かれ尾花」
「木枯らしや 冠者の墓撲つ 松落葉」
これらは、明治28年(1895年)、松山中学の英語教師だった漱石がこの地を訪れた際に詠んだもの。範頼の哀しい運命に心を寄せた句が、松山の俳人・村上霽月の筆で刻まれています。句碑裏面には、霽月の書と共に当時の由来も記されており、文学と歴史が響き合う趣深いスポットです。
◆ 鎌倉神社 基本情報 ◆
住所:伊予市上吾川1492
電話番号:089-982-1710(称名寺)
参拝時間:参拝自由(いつでもお参りいただけます)
駐車場:なし(称名寺の駐車場をご利用ください)
おわりに
いかがでしたでしょうか?称名寺&鎌倉神社は、歴史と自然が織りなす静謐なスポット。称名寺の美しい枯山水庭園や春の桜、そして幽玄な水琴窟の音色に心癒され、隣接する鎌倉神社の“源範頼伝説“が息づく墓所で、源氏のロマンを感じてください。歴史好きも自然好きも必見の、心落ち着く旅先です。
記事投稿者:かず
ひめ旅部のかずです。生まれも育ちも愛媛県は伊予市。「